
指先に神経を集中させて、
数ミリのズレを整えていく。
小さなレースを縫い付けたり、
米粒みたいなパンを丸めたり、
ビーズを一粒ずつ繋いでいく。
そういう世界に、ずっと憧れている。
あの、チマチマした時間。
視界が狭くなって、世界が遠くなる感じ。
たぶん私は、あの中に入りたい。
——でも。
まだ、一度も始めていない。
理由ははっきりしている。
「作ったあと、どうするんだろう」
そこが決まっていない。
飾る気はない。
誰かにあげる自信もない。
売れるとも思っていない。
じゃあ、それは何になるんだろう。
机の上に置かれたままの、小さな物体。
少しだけ手間のかかった、“よくわからない何か”。
それを想像すると、手が止まる。
作る前なのに、
もう「処分」のことを考えている。
まだ存在していないものの、行き先に困っている。
たぶん、変なんだと思う。
でも、どうしてもそこを飛ばせない。
世の中のチマチマ愛好家たちは、
どうしているのだろう。
何も考えずに作っているのか、
それとも、ちゃんと出口を決めてから始めているのか。
私は、まだそこに行けていない。
材料を広げる前で、止まっている。
憧れだけが、少しずつ積み上がっていく。
ありがとう